社外監査役だけが損害賠償責任を追及された事例


※ 論点整理を目的とした投稿ですので、事案の概要と論点をひとまとめにした箇条書きのみを記載しています。結論は、どこかの媒体で発表するかもしれませんし、発表しないかもしれません。

・某上場会社(現在は上場廃止)が粉飾決算発覚等により上場廃止になったため、株主から取締役、監査役、上場を引き受けた証券会社に対し損害賠償責任を求めたもの(東京高裁平成30年3月23日判決)。

・このうち、監査役に対するもののみ言及。第一審である東京地裁平成28年12月20日判決では、社外監査役も含めた監査役全員の責任が認定されていたが、高裁では公認会計士の資格を持つ社外監査役のみの責任が認定されたもの。

・会社法による公認会計士の監査を受けていれば、監査役の会計監査は公認会計士の監査を「相当と認めれば」特段の責任がないような実務になっているが、今回の事例は当初による告発があったことから、監査役にとっても粉飾決算に気づく機会があり、公認会計士の監査を単に相当と認めただけでは免責されないとしたもの。

・公認会計士からの要望に応じて情報共有するのではなく、社外監査役としての立場であっても、監査役の側からも公認会計士に対しアクションを起こす必要があることも改めて認識しないといけないかも?

社外監査役の業務監査について任務懈怠が認められた事例

※ 論点整理を目的とした投稿ですので、事案の概要と論点をひとまとめにした箇条書きのみを記載しています。結論は、どこかの媒体で発表するかもしれませんし、発表しないかもしれません。

・代表取締役が暴走し、取締役や監査役が反対したにもかかわらず、手形を濫発して会社が破綻。当該破綻を止められなかった社外監査役である公認会計士の任務懈怠(にんむけたい)が認められたが、重過失まではなかったとした事例。大阪高裁平成27年5月21日判決(判時 2279号96頁)。

・当該社外監査役は何もしなかったわけではなく、反対の意思は示していた。でも任務懈怠になる?

・監査役の監査は、取締役の業務執行を事後的に評価するだけでなく、不当な業務執行を事前に防止することも含まれる。

・監査役は取締役会に出席する義務があり(会社法383条)、取締役会では、内部統制システムを整備することになる。内部統制システムとは、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制をいう(会社法362条4項6号参照)。

・当該判決は、当該社外監査役が取締役会において、内部統制システムを見直しを提言し、代表取締役を暴走を事前に食い止めるべきでったというもの。

・ただし、暴走は食い止められなかったものの、全く意見を述べていなかったわけではないため、重過失までは認めていないというもの。

・この判決からは、反対意見をいうだけではだめで、内部統制システムの見直しにまで言及しないと、任務懈怠による損害賠償責任を被る可能性があるというもの。

・というわけで、代表取締役を含めた取締役に対し、内部統制システムの見直しまで意識した意見を言えないのに社外監査役を引き受けていると、痛い目にあってしまうのかも?

青色申告に係る帳簿書類等の備付け、記録、保存がないってどういう状態?

※ 論点整理を目的とした投稿ですので、事案の概要と論点をひとまとめにした箇条書きのみを記載しています。結論は、どこかの媒体で発表するかもしれませんし、発表しないかもしれません。

・法人税法127条は、青色申告の承認取消しに関する規定。そのうち、帳簿書類等の備付け、記録、保存がない場合の考え方整理。

・物理的備付けがあればOKとする考え方。→書面だけならいいけど、電子取引データの割合も高まってきたので、今では適合しないかも?

・応答義務や提示義務を履行すればOKとする考え方。→税務調査で調査官の指示に従い、帳簿書類等を提示できればOKということ。ただ、昨今の電子帳簿保存法関連で、電子取引データに検索要件が加わっており、検索できない状況での提示はまずいかも?また、システム上検索できないにしても、調査官の指示に従って、納税者の側がデータを抽出して提示するのは容認されるか?

・応答、提示できればいいのではなく、さらに、「直ちに」応答、提示できればOKとする考え方。→この考え方だと、最初からシステムで検索できないときついか?ただ、書面のデータも依然として存在するのであり、電子取引データだけ「直ちに」要求するのは、バランスを欠く判断ではないか?

青色申告の取消しが生じうる場合の具体的な目安

※ 論点整理を目的とした投稿ですので、事案の概要と論点をひとまとめにした箇条書きのみを記載しています。結論は、どこかの媒体で発表するかもしれませんし、発表しないかもしれません。

・個人の場合は「個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」が参考に。 https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/shotoku/shinkoku/000703-3/01.htm

・大別すると5パターンあるが、注目は、5の電子帳簿保存法関連。「今後の改善可能性等を総合勘案の上、真に青色申告書を提出するにふさわしいと認められるかどうかを検討」とあるため、調査官から指摘されたことに真摯に対応する必要あり?

・法人の場合は「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」が参考に。 https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/000703-3/01.htm

・大別すると6パターンあり。「無申告又は期限後申告の場合における青色申告の承認の取消し」があるため、期限後申告のやりすぎに注意。電子帳簿保存法関連は個人と同様に真摯な対応が必要?

農地法4条と5条の違い

※ 論点整理を目的とした投稿ですので、事案の概要と論点をひとまとめにした箇条書きのみを記載しています。結論は、どこかの媒体で発表するかもしれませんし、発表しないかもしれません。

・農地法4条→農地の転用の制限、農地法5条→農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限

・いずれの場合も許可が必要だが、4条→同一人物が所有し、用途が変わっただけ、5条→権利移動なので、所有人物が変わったという違いあり

・なお、4条による許可をもらったからといって、譲渡していないという主張が通らない場合があるので留意

・札幌地裁平成31年3月27日判決(判例集未登載)は、そのパターン。納税者が4条による許可をもらった=譲渡していないと同視できるという主張が通じなかった

・同判決は、所得税法上の「譲渡」と、租税特別措置法(相続税法関係)の「譲渡」は、必ずしも同じ意味ではない旨を示した判決としても留意が必要。

農地の転用手続の簡素化

※ 論点整理を目的とした投稿ですので、事案の概要と論点をひとまとめにした箇条書きのみを記載しています。結論は、どこかの媒体で発表するかもしれませんし、発表しないかもしれません。

・農地とは、農地法によると、耕作の用に供される土地。田んぼや畑。

・農地を転用しようとする場合は、原則として市町村の農業委員会を通じて都道府県知事に依頼なので、少々面倒。(農地法4条)

・転用手続きの簡素化が2021年度中に間に合うよう検討されているとのことである。ということは2022年3月末までに何らかの動きがあるか?

・市町村に提出する農業経営に係る計画書だけでOKとし、現行、農業委員会に提出している図面や登記関係書類の提出が不要になるということ

・計画書だけで済むのはいいが、転用後の状況はどのようにモニタリングするのか?そこが十分でないと悪用する者も出ないか心配。計画書に書くだけなら何とでもできるかも?