IT委員会研究報告第57号「ITの利用の理解並びにITの利用から生じるリスクの識別及び対応に関する監査人の手続に係るQ&A」

・従来のIT委員会実務指針第6号「ITを利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの識別と評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続について」及びIT委員会研究報告第53号「IT委員会実務指針第6号「ITを利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの識別と評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続について」に関するQ&A」が統合されて、題名の57号になるというもの。

・監査基準委員会報告書315「重要な虚偽表示リスクの識別と評価」の改正の伴うもので、新315が適用される2023年3月決算に係る財務諸表の監査及び2022年9月に終了する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査以降は、57号が適用。

・6号と53号の違いがよくわからないまま修了考査を受ける受験生も多かったかもしれず、57号のQ&Aに統一されて歓迎の受験生は多いかも?

・一方、6号を理解すれば財務諸表監査におけるITについて体系的に理解できたという面もあり、Q&Aのみでは、学習は簡単でも、試験後の実務においては、困る面もあるかも?

・財務諸表監査におけるITの骨格ともいえる部分がスリムになったので、他のIT関係研究報告にもそれなりに注力する必要が出てくるか?(今までは6号と53号をおさえていれば合格点は狙えた。)

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ユニバーサルミュージック事件

※ 論点整理を目的とした投稿ですので、事案の概要と論点をひとまとめにした箇条書きのみを記載しています。結論は、どこかの媒体で発表するかもしれませんし、発表しないかもしれません。

・いわゆる「租税回避」に該当するかどうかの事案。この度最高裁判決が出たもの。地裁から最高裁までの判示は以下のとおり。いずれも国側の敗訴。

・地裁「同族会社の行為又は計算が経済的合理性を欠くか否かを判断するに当たっては,当該行為又は計算に係る諸事情や当該同族会社に係る諸事情等を総合的に考慮した上で,法人税の負担が減少するという利益を除けば当該行為又は計算によって得られる経済的利益がおよそないといえるか,あるいは,当該行為又は計算を行う必要性を全く欠いているといえるかなどの観点から検討すべきものである。」

・「諸事情等を総合的に考慮」といった形で納税者寄りの判決?

・高裁「同族会社等の行為又は計算が同項にいう『これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの』か否かは,専ら経済的,実質的見地において当該行為又は計算が純粋経済人として不自然,不合理なものと認められるか否か,すなわち経済的合理性を欠くか否かという客観的,合理的基準に従って判断すべきものと解される。」

・「客観的、合理的基準に従って判断」としており、諸事情等の考慮は言及せず。地裁よりは厳しい判決?

・最高裁「同項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、同族会社等の行為又は計算のうち、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであって、法人税の負担を減少させる結果となるものをいうと解するのが相当である。」

・最高裁では、基準への言及もなくなった形?認定事実に基づき淡々と判断をするということか?

・基準を示してしまえば、当該基準を形式的に整える輩が出てしまうから、このような判示となるのは当然か?

相続したマンションで路線価などに基づいた不動産評価が低すぎるなどとして課税した国税当局の処分の妥当性が争われた訴訟

※ 論点整理を目的とした投稿ですので、事案の概要と論点をひとまとめにした箇条書きのみを記載しています。結論は、どこかの媒体で発表するかもしれませんし、発表しないかもしれません。

・「最高裁『伝家の宝刀』にお墨付き」といったセンセーショナルな見出しで報じる記事もありますが、最高裁自体は当該「伝家の宝刀」についての判断は下していません。

・不動産評価は、時と場合に応じて、路線価や不動産鑑定評価など適切に使い分けるという当然のことを判示したものであって、路線価よりも不動産鑑定評価の方が適切と一般的に判示したものでない点も留意。

・この判決を悪用して、必要もないのに不動産鑑定評価を乱用し、私腹を肥やす輩が登場しないかどうか懸念するところ。

四半期レビューはどうなる?(続報)

・四半期報告書廃止はわかったけど、四半期レビューをどうするのかは審議中?

・一部の業種で今も行われている中間監査にするか?あるいは第2四半期だけ四半期レビューをするか?等の案がある模様。

・外国人投資家が売買の大多数を占める日本市場にとっては、この流れが嫌われて株価下落につながらないかどうか懸念されるところです。

・ちなみに、「監査」と「四半期レビュー」は保証するレベルが違うので、手間も全然違います。

四半期レビューはどうなる?

・四半期レビューとは、四半期報告書に、投資家が投資判断を誤る程度に重要なミスがないことを表明するため行うもの。

・四半期決算短信は、四半期レビューの対象ではないため、四半期報告書が廃止されたら、四半期レビューもなくなってしまう?

・四半期決算短信発表後、期末になっていきなり重要なミスが見つかり、期末になってから修正するのも投資家にとっては迷惑では?

・四半期レビューは四半期財務諸表の全体を検証するものであるが、監査人が重要と判断した項目、例えば、収益認識や固定資産の減損だけでも四半期ごとに検証するような制度にはできないだろうか?いわゆる合意された手続というものですが。

・監査人が重要と判断した項目は、KAMという形で期末の監査報告書に出てきますし。

消費税インボイス交付義務が免除されるパターン

・税務業務をやっているとインボイスが話題になることが多いですが、インボイスの交付義務が免除されるパターンについて簡単に解説を。

・改正後の消費税法57条の4第1項但書、消費税法施行令70条の9第2項を参照。

・3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送→3万円以上だとインボイスの交付が必要。判定基準は、1回の取引なので、複数人で新幹線切符をまとめて購入する場合や長期間の定期券を購入する場合は、3万円以上なので、インボイスが交付されると思われる。窓口販売だと判断が面倒そうな印象が。

・出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売

・生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売→前述の卸売市場といい、食べ物系が目立ちます。

・3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等→食品の自動販売機等が想定されます。なお、先ほどの公共交通機関の自動券売機はこの特例に該当しません。ここでいう機械はサービスや物品の提供と代金の授受が当該機械で完結するようなものを指しており、先ほどの自動券売機は代金の精算と切符の発行だけで、交通機関により運搬するというサービスは別途提供されるので、該当しません。

・郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス→ポストに投函されたものだけが該当し、郵便局の窓口で運搬を依頼した場合は、該当しません。

・こうやって見てみると、インボイスの交付義務が免除されるパターンって、かなり特殊なものに限られていて、例外なく対応が求められますね。