公認会計士法上の大会社等

・会社法の大会社とは似て非なる概念なので注意。監査報告書にサインする期間の上限や、他の会計士を補助者に入れる必要がある等の制限が生まれます

・具体的には、公認会計士法24条の2にあるように、以下のとおり。

一 会計監査人設置会社(資本金の額、最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額その他の事項を勘案して政令で定める者を除く。)
二 金融商品取引法第百九十三条の二第一項又は第二項の規定により監査証明を受けなければならない者(政令で定める者を除く。)
三 銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項に規定する銀行
四 長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第二条に規定する長期信用銀行
五 保険業法第二条第二項に規定する保険会社
六 前各号に掲げる者に準ずる者として政令で定める者

・1号の会計監査人設置会社の場合は、資本金100億円未満かつ負債1000億円未満なら該当しない(公認会計士法施行令8条)。

・2号はいわゆる上場会社など。資本金5億円未満(又は直近3年間の平均売上高が10億円未満)かつ負債が200億円未満。会社法の大会社に該当しない会社と類似(公認会計士法施行令9条1号)。上場会社かつ会計監査人設置会社の場合は、2号が適用。

・ちなみに公認会計士法24条の2第6号にいう政令で定める者とは、公認会計士法施行令第10条にあるように、以下のとおり。

一 全国を地区とする信用金庫連合会
二 全国を地区とする労働金庫連合会
三 全国を地区とする信用協同組合連合会
四 農林中央金庫
五 独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第三十九条第一項の規定により会計監査人の監査を受けなければならない独立行政法人
六 国立大学法人及び大学共同利用機関法人
七 地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第三十五条第一項の規定により会計監査人の監査を受けなければならない地方独立行政法人

というわけで、信用金庫、労働金庫、信用協同組合等は、出資金が100億円以上、又は負債が1000億円以上だったとしても、公認会計士法にいう大会社等には該当しません。

社外監査役だけが損害賠償責任を追及された事例


※ 論点整理を目的とした投稿ですので、事案の概要と論点をひとまとめにした箇条書きのみを記載しています。結論は、どこかの媒体で発表するかもしれませんし、発表しないかもしれません。

・某上場会社(現在は上場廃止)が粉飾決算発覚等により上場廃止になったため、株主から取締役、監査役、上場を引き受けた証券会社に対し損害賠償責任を求めたもの(東京高裁平成30年3月23日判決)。

・このうち、監査役に対するもののみ言及。第一審である東京地裁平成28年12月20日判決では、社外監査役も含めた監査役全員の責任が認定されていたが、高裁では公認会計士の資格を持つ社外監査役のみの責任が認定されたもの。

・会社法による公認会計士の監査を受けていれば、監査役の会計監査は公認会計士の監査を「相当と認めれば」特段の責任がないような実務になっているが、今回の事例は当初による告発があったことから、監査役にとっても粉飾決算に気づく機会があり、公認会計士の監査を単に相当と認めただけでは免責されないとしたもの。

・公認会計士からの要望に応じて情報共有するのではなく、社外監査役としての立場であっても、監査役の側からも公認会計士に対しアクションを起こす必要があることも改めて認識しないといけないかも?

社外監査役の業務監査について任務懈怠が認められた事例

※ 論点整理を目的とした投稿ですので、事案の概要と論点をひとまとめにした箇条書きのみを記載しています。結論は、どこかの媒体で発表するかもしれませんし、発表しないかもしれません。

・代表取締役が暴走し、取締役や監査役が反対したにもかかわらず、手形を濫発して会社が破綻。当該破綻を止められなかった社外監査役である公認会計士の任務懈怠(にんむけたい)が認められたが、重過失まではなかったとした事例。大阪高裁平成27年5月21日判決(判時 2279号96頁)。

・当該社外監査役は何もしなかったわけではなく、反対の意思は示していた。でも任務懈怠になる?

・監査役の監査は、取締役の業務執行を事後的に評価するだけでなく、不当な業務執行を事前に防止することも含まれる。

・監査役は取締役会に出席する義務があり(会社法383条)、取締役会では、内部統制システムを整備することになる。内部統制システムとは、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制をいう(会社法362条4項6号参照)。

・当該判決は、当該社外監査役が取締役会において、内部統制システムを見直しを提言し、代表取締役を暴走を事前に食い止めるべきでったというもの。

・ただし、暴走は食い止められなかったものの、全く意見を述べていなかったわけではないため、重過失までは認めていないというもの。

・この判決からは、反対意見をいうだけではだめで、内部統制システムの見直しにまで言及しないと、任務懈怠による損害賠償責任を被る可能性があるというもの。

・というわけで、代表取締役を含めた取締役に対し、内部統制システムの見直しまで意識した意見を言えないのに社外監査役を引き受けていると、痛い目にあってしまうのかも?

住宅借入金控除

・年末借入金残高の最大1%から最大0.7%が税額控除可能額に、控除できる期間が最長10年から13年に延長となりました。

・これは既存の住宅借入金控除適用者には関係ありません。既存の適用者は住宅を建てたタイミングや建てた住宅の種別により取扱いが異なります。

・今回の改正が遡及して適用されることがないので、焦る必要はありません。

e-taxトラブル関係

3/14から発生していたたe-taxのトラブルで、通常e-taxで提出し、青色申告控除を65万円受けていた方が、やむをえず紙面で提出し青色申告控除を55万円とした場合の救済措置が出ていますね。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/data/faq.pdf

こちらの問3参照です。ただし、無条件に認められないので4/15までに対応しましょう。

電子署名とeシールの違い

※ 論点整理を目的とした投稿ですので、事案の概要と論点をひとまとめにした箇条書きのみを記載しています。結論は、どこかの媒体で発表するかもしれませんし、発表しないかもしれません。

・電子署名→署名者の「意思」を表すもの

・意思というのは、自分で●●したいという意味ではなく、契約当事者間で契約に合意する等のことを指す

・電子署名は各個人に帰属するため、契約等での署名に用いられるが、eシールは、ある法人が当該電子データを作成したことを証明するものにすぎないため、契約で使うものではないという整理のようである

・当事者の意思は不要だが、大量に発行する必要がある請求書、見積書、領収書等に使用されることが想定されるのがeシールとのこと

・ヨーロッパではeシールにも法的効力を持たせる動きがあるようだが、日本は検討中。日本企業がヨーロッパ企業と取引するときに支障が出ることはないか?