納税の猶予

具体的な取扱いは後日公表されるはずですが、取り急ぎ原則論を書いておきます。

国税については、災害により全積極財産のおおむね20%以上の損失を受けた場合の納税の猶予と災害等を受けたことにより納付が困難な場合の納税の猶予の2種類があります(国税通則法46条)。いずれの猶予も、原則として1年以内の猶予期間とされますが、一定の場合2年を超えない期間内で、申請により猶予期間の延長を受けることができます(国税通則法46条7項)。なお、猶予の種類により提出書類が異なるため、留意が必要です(国税通則法46条の2)。

また、地方税については、その者の申請に基づき、1年以内の期間を限り猶予が認められます(地方税法15条)。

災害に伴う申告期限の延長

国税の場合

 自然災害など、納税者の責めに帰さないやむを得ない理由により、その申告、納付等をすることができない者が都道府県の全部または一部の地域にわたり広範囲に生じたと認められる場合に、国税庁長官が、地域および期日を指定して、その申告、納付等の期限を延長することがあります(国税通則法第11条)。ということで、今回の地震でも何らかの手当はあると思います。これにより、指定された地域内に納税地のある納税者については、期限延長の申請手続を特別にすることなく、申告、納付等の期限が延長されます。地域および期日の指定は、指定され次第、官報に掲載されることになります。

 なお、地域指定による期限延長は、指定地域内に納税地のある納税者に限られますので、指定地域内に事業所等を有する納税者であってもその納税地が指定地域外の地域にある場合は、申告、納付等の期限は延長されません。この場合は、納税地の所轄税務署長に申請することにより、その理由のやんだ日から2か月以内に限り、申告、納付等の期限が延長されます。これは「地域指定による期限延長」に対して「個別指定による期限延長」といいます。

地方税の場合

 地方税でも、条例で定めるところにより申告・納期限の延長が行われることがあります(地方税法第20条の5の2)。この場合は、納税地の条例で内容を確認する必要がありますが、「災害による県税(市税、町税)の減免に関する条例」といった名称であることが多いようです。

罹災証明書に添付する写真

税金の減免や保険金の申請で、罹災証明書を作成さ、被害状況の写真を添付することがあります。

その際の写真をわかりやすくするコツです。

位置情報は記録されてますか?位置情報がないと、罹災証明書に書いた住所と整合しているか不明確になります。位置情報が記録される設定にして撮影を開始しましょう。

キャプションを追加していますか?位置情報を追加しても、それが住宅のどの部分か、写真だけではわからない場合があります。キャプションを追加しながら撮影をするように注意して、撮影するたびに玄関、居間、寝室、風呂場などキャプションを追加しましょう。

色々な角度から撮影していますか?色々な角度から撮影すると、死角が少なくなり、被害状況がわかりやすくなります。同じ場所の撮影なので、キャプションは、玄関①、玄関②・・・にするなど番号をつけましょう。

災害関連税制まとめ

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/04_4.htm

国税(所得税、法人税、消費税など)

https://www.pref.ishikawa.lg.jp/zei/oshirase/saigaigenmen20.html

県税(石川県の場合、自動車税、個人事業税、不動産取得税)

https://www.city.wajima.ishikawa.jp/reiki/act/frame/frame110000219.htm

市税(輪島市の場合、個人市民税、固定資産税、都市計画税)

飲食費の上限変更

https://www.sankei.com/article/20231214-4EHGF7IWWJPZBAGL7PVCTCGBV4/

交際費等に該当しない飲食費は、現行だと一人当たり5000円以下ですが(租税特別措置法61条の4第6項、租税特別措置法施行令37条の5第1項)、この金額が1万円以下に引き上げられるということですかね。

なお、資本金が1億円以下である等の、いわゆる中小法人等に該当すれば、交際費等に該当しても1事業年度800万円までは、所得のマイナス要素である損金になることから(租税特別措置法61条の4第2項)、金額が引き上げられたからといって、影響があるのは、交際費等に該当してしまうと損金にならない法人だけかと思われます。

減価償却資産

これは、会計上の概念ではなく、税法の定義です。法人税法で言うと、法人税法の2条23号に規定があります。

二十三 減価償却資産 建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう。

では、政令というのは何を指すのかというと、法人税法施行令13条に規定があります。

第十三条 法第二条第二十三号(定義)に規定する政令で定める資産は、棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする。

 建物及びその附属設備(暖冷房設備、照明設備、通風設備、昇降機その他建物に附属する設備をいう。)

 構築物(ドック、橋、岸壁、桟橋、軌道、貯水池、坑道、煙突その他土地に定着する土木設備又は工作物をいう。)

 機械及び装置

 船舶

 航空機

 車両及び運搬具

 工具、器具及び備品(観賞用、興行用その他これらに準ずる用に供する生物を含む。)

 次に掲げる無形固定資産

 鉱業権(租鉱権及び採石権その他土石を採掘し又は採取する権利を含む。)

 漁業権(入漁権を含む。)

 ダム使用権

 水利権

 特許権

 実用新案権

 意匠権

 商標権

 ソフトウエア

 育成者権

 公共施設等運営権

 樹木採取権

 営業権

 専用側線利用権(鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)第二条第一項(定義)に規定する鉄道事業又は軌道法(大正十年法律第七十六号)第一条第一項(軌道法の適用対象)に規定する軌道を敷設して行う運輸事業を営む者(以下この号において「鉄道事業者等」という。)に対して鉄道又は軌道の敷設に要する費用を負担し、その鉄道又は軌道を専用する権利をいう。)

 鉄道軌道連絡通行施設利用権(鉄道事業者等が、他の鉄道事業者等、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構又は国若しくは地方公共団体に対して当該他の鉄道事業者等、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構若しくは独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構の鉄道若しくは軌道との連絡に必要な橋、地下道その他の施設又は鉄道若しくは軌道の敷設に必要な施設を設けるために要する費用を負担し、これらの施設を利用する権利をいう。)

 電気ガス供給施設利用権(電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第八号(定義)に規定する一般送配電事業、同項第十号に規定する送電事業、同項第十一号の二に規定する配電事業若しくは同項第十四号に規定する発電事業又はガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)第二条第五項(定義)に規定する一般ガス導管事業を営む者に対して電気又はガスの供給施設(同条第七項に規定する特定ガス導管事業の用に供するものを除く。)を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して電気又はガスの供給を受ける権利をいう。)

 水道施設利用権(水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第三条第五項(用語の定義)に規定する水道事業者に対して水道施設を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して水の供給を受ける権利をいう。)

 工業用水道施設利用権(工業用水道事業法(昭和三十三年法律第八十四号)第二条第五項(定義)に規定する工業用水道事業者に対して工業用水道施設を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して工業用水の供給を受ける権利をいう。)

 電気通信施設利用権(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第九条第一号(電気通信事業の登録)に規定する電気通信回線設備を設置する同法第二条第五号(定義)に規定する電気通信事業者に対して同条第四号に規定する電気通信事業の用に供する同条第二号に規定する電気通信設備の設置に要する費用を負担し、その設備を利用して同条第三号に規定する電気通信役務の提供を受ける権利(電話加入権及びこれに準ずる権利を除く。)をいう。)

 次に掲げる生物(第七号に掲げるものに該当するものを除く。)

 牛、馬、豚、綿羊及びやぎ

 かんきつ樹、りんご樹、ぶどう樹、梨樹、桃樹、桜桃樹、びわ樹、くり樹、梅樹、柿樹、あんず樹、すもも樹、いちじく樹、キウイフルーツ樹、ブルーベリー樹及びパイナップル

 茶樹、オリーブ樹、つばき樹、桑樹、こりやなぎ、みつまた、こうぞ、もう宗竹、アスパラガス、ラミー、まおらん及びホップ

というわけで、法人税法施行令で「減価償却資産は、・・・次に掲げるものとする」とされているため、掲げられていないものを減価償却資産に含めるのは適切でないと考えられます。