障害者相談支援事業の消費税法上の取扱い(根拠と思われる通達)

国税庁の根拠と思われる消費税法基本通達です。

(社会福祉事業の委託に係る取扱い)
6-7-9 社会福祉法人等が地方公共団体等から当該地方公共団体等が設置した社会福祉施設の経営を委託された場合に、当該社会福祉法人等が行う当該社会福祉施設の経営は、法別表第一第七号ロ《社会福祉事業等に係る資産の譲渡等》に規定する社会福祉事業として行われる資産の譲渡等に該当し、非課税となる。(平12課消2-10により追加)

(注) 事業者が社会福祉施設に係る業務の一部を当該社会福祉施設を設置した地方公共団体等又は設置者である地方公共団体等から当該社会福祉施設の経営を委託された社会福祉法人等の委託により行う場合(当該業務の一部を行うことが社会福祉事業に該当する場合を除く。)、当該事業者が行う業務は、同号に規定する社会福祉事業として行われる資産の譲渡等には該当しないことに留意する。

社会福祉法の条文では、社会福祉事業の一つとして、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律・・・(中略)・・・に規定する地域活動支援センター・・・を経営する事業」があります。障害者相談支援事業を行う地域活動支援センターの経営(施設の管理運営)の委託ということなら非課税ですが、施設の管理運営は行わずに、障害者相談支援事業だけを行う形の委託なら、課税取引になってしまうということのようです。

障害者相談支援事業の消費税法上の取扱い(概要)

https://www.chunichi.co.jp/article/720908#:~:text=%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E3%81%8C%E4%B8%80%E8%88%AC%E7%9A%84,%E7%A8%8E%E3%81%AE%E8%AA%B2%E7%A8%8E%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%80%82

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律77条に規定する「地域生活支援事業」(記事では「障害者相談支援事業」と表記)が、消費税法上の非課税取引とならない事例。消費税法の別表第一の七ロや社会福祉法第2条の社会福祉事業の定義を改めて確認したところ、見当たらないですね。しいていえば、「地域活動支援センターを経営する事業」が近いようですが・・・

事業者の立場からすると、本来は消費税がもらえた取引なのにもらえていなかったということになるでしょうか。

インボイス登録番号検索

法人は基本的に「T+法人番号」でわかるのですが、個人は規則性がないから仕入税額控除をしたい側(買い手側、資産を買ったりサービスを受ける側)としては調査が大変ですね。わざわざ調査しなくても大丈夫なようなサービスも出てきているようですが、このようなサービスを使えない層は手作業で調べることになるんでしょうか・・・

https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/

これが個人の氏名や屋号での検索に対応すれば多少は楽になるのですが。

新設法人の「資本金又は出資の額」

消費税の納付は、必ずしも法人設立1期目から必要なものではなく、事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が千万円以上の法人等に限定されています(消費税法12条の2第1項)。では、「資本金の額又は出資の金額」というのは、どのような法人を指すのでしょうか。資本金といえば、株式会社がまず思い浮かびます。それでは、出資の金額とは?

この辺りは消費税法基本通達で示されています。

(出資の金額の範囲)
1-5-16 法第12条の2第1項《新設法人の納税義務の免除の特例》に規定する「出資の金額」には、営利法人である合名会社、合資会社又は合同会社に係る出資の金額に限らず、農業協同組合及び漁業協同組合等の協同組合に係る出資の金額、特別の法律により設立された法人で出資を受け入れることとしている当該法人に係る出資の金額、地方公営企業法第18条《出資》に規定する地方公共団体が経営する企業に係る出資の金額及びその他の法人で出資を受け入れることとしている場合の当該法人に係る出資の金額が該当するのであるから留意する。

というわけで、協同組合のような非営利法人、その他「出資」を受けいれる法人、地方公共団体における特別会計なども対象になっています。

インボイス保存義務に関する少額特例

税込金額1万円未満のインボイスの保存義務が不要とされている経過措置です。この経過措置は、基準期間(2年前又は2事業年度前の売上高)における課税売上高が1億円以下、特定期間(1年前の上半期又は1事業年度前の上期の売上高)における課税売上高が5000万円以下の場合に適用が可能です。

新規開業した個人や新規設立した法人は、基準期間がないため、1期目は消費税の納付義務はありません。しかし、資本金が1000万円以上である等の一部の法人は、1期目から消費税の納付義務があります。

消費税の納付義務がないなら、少額特例が適用できるかどうかは気にする必要がないですが、基準期間も特定期間もない1期目から消費税の納付義務がある法人は、少額特例が適用できるのかどうか、よくわかりません。少額特例の根拠条文を読む限り、2期目からは、特定期間の課税売上高に基づき、経過措置を適用することも可能ですが、1期目は、基準期間はもちろんのこと、特定期間が存在しないので、少額特例が適用できず、インボイスの保存義務があるように見えるのですが・・・

消費税の簡易課税

簡易課税制度を適用したいと思ったら、課税期間の初日の前日までに届出書の提出が必要です。課税期間というのは、特段の届出がなければ、個人なら暦年、法人なら事業年度になります。ということで、例えば、個人が令和5年から簡易課税制度を適用したいと思ったら、令和4年の年末までに届出書を提出する必要があることになりますが、免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までにインボイスの登録を受ける場合は、登録日において課税事業者になる経過措置があります。

この場合、登録日中に提出する簡易課税制度の届出書に「登録日が含まれる課税期間中に簡易課税制度を適用したい」旨を記載したら、特例的に、届出書を提出した年から簡易課税制度の適用が認められます(28年改正法附則44④、インボイス通達5-1)。法人も同じ取扱いです。

ただし、これは免税事業者を対象とした特例なので、以前から課税事業者であった人が、提出を失念した者には適用されないため注意です。

消費税の課税期間

個人なら1年(暦年)、法人なら1事業年度です。この課税期間というのは、当局への届出により短縮が可能です。(1か月又は3か月)

なぜ短縮するのかというと、よく言われるのが、支払った消費税の還付を早く受けるためです。輸出売上が多い事業者や設備投資が頻繁な事業者は、受け取った消費税に比べて、支払った消費税が多くなるとされるので、そうなります。

ところで、インボイスの導入に伴い、消費税のいわゆる「2割特例」という制度が創設されました。これは、簡単に言うと消費税の計算根拠となる「売上」に20%をかけた額が納付すべき消費税額となる制度なのですが、「課税期間の短縮」を適用していると、「2割特例」が使えなくなります(消費税法の改正附則(平成二八年三月三一日法律第一五号)の第51条の2第4号を参照)。

また、中間申告では、年に複数回、消費税を納めることになりますが、「課税期間の短縮」とは異なるので、ご留意ください。