いわゆる少額資産の償却資産税における取扱い

1単位当たり10万円未満の減価償却資産は、法人の場合だと、費用処理していれば償却資産税の課税対象外、資産計上していれば償却資産税の課税対象というように取扱いに違いがあります。

これは、法人税の少額資産に関する規定が、「内国法人がその事業の用に供した減価償却資産…で、取得価額…が十万円未満であるもの…を有する場合において、…損金経理をしたときは、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する」となっていることが根拠になります(法人税法施行令133条1項)。

「損金経理をしたときは」とあるので、資産に計上する場合と、損金(費用)に計上する場合の2パターンがあるため、償却資産税でも差が出るわけですね。

ちなみに個人事業主の場合は、所得税法の少額資産に関する規定が、「居住者が…所得を生ずべき業務の用に供した減価償却資産…で、取得価額…が十万円未満であるもの…については、…所得の金額の計算上、必要経費に算入する。」となっており、法人税とは異なり、資産に計上するパターンを想定した条文になっていません(所得税法施行令138条1項)。

では、資産計上した場合はどうなるのか?ということですが、資産計上されたものは、会計・税金の計算ソフトを使って作成した場合、「償却資産課税台帳」に反映されると思います。償却資産税は、償却資産課税台帳の価格を基礎に課税されるので(地方税法349条の2)、少額資産であっても資産計上すると課税対象になってしまうものと考えられます。

固定資産評価員

固定資産税評価額の算定を担う方ですね。募集要項を見ていると、不動産鑑定士又は不動産鑑定士補の人が多いんですかね。なお、議員と兼務しちゃいけないとか(地方税法406条)、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者等の欠格事項に該当する人はなれないとかいう縛りがあるようですね(地方税法407条)。

地方税法408条

固定資産の実地調査です。「市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少くとも一回実地に調査させなければならない。」という規定ですが、最近では担当者が直接現地に赴くのではなく、航空写真やドローン等を利用しての調査もやっているようです。

実地調査について (digital.go.jp)

このような予算措置ができる自治体ならいいですが、できない自治体はどのように対応しているんでしょうね。

名古屋高裁平成21年4月23日判決

 冷凍倉庫に係る固定資産評価及び課税処分について、固定資産評価基準(昭和38年12月25日自治省告示158号)に定める「冷凍倉庫用のもの」についての自明の解釈を誤ったとされる事例ですね。要は固定資産税の課税標準を決める自治体の評価が間違っていて、固定資産税の誤った課税が継続していたというものです。

 他にも似た事例がないか探してみたいところです。

固定資産評価審査委員会の委員に職務上の注意義務違反が認められないとした原審の判断に違法があるとされた事例

最高裁令和4年9月8日第一小法廷判決です。固定資産評価に携わる職員(公務員)の注意義務違反に言及した判決はよく見ますが、固定資産評価審査委員会の委員の注意義務違反に言及した判決は珍しいですね。

固定資産評価審査委員会の委員は士業や学識経験者が就任するパターンが多いのですが、この事例では先例や文献がない評価方法を適用していたようですね。

地裁や高裁の判決文の入手が困難でしたが、あるデータベースから発見されたので、これからじっくりと読んでみようと思います。

外形標準課税、資本金の額以外の基準検討

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC0755B0X01C22A0000000/

減資を行って法人事業税の外形標準課税を回避してきた「大企業」が多かったですが、とうとうメスが入る方向なんですかね。同日の会合で総務省は想定される指標として「資本金と資本準備金の合算額」「純資産」「従業員数」などを示しているようです。

このうち、従業員数というのは外形標準課税の計算要素の一つである「収益配分額」の関連ですかね。収益配分額とは、非常に簡単にいうと、報酬給与額(いわゆる人件費)、純支払利子(受取りから支払いを差し引いたもの)、純支払賃借料(利子と同じ考え方)の合計額であり、従業員数以外にも借入金の多寡や設備のレンタル・リースの件数・金額規模なども影響してきます。

というわけで新しい基準を設けてもいたちごっこになるのが想定されます。どうしても課税したいというのであれば、基準を設けずに一律に広く、しかし、税率は低く課税するのが分かりやすいようにも思いますが…

地方法人課税に関する検討会

総務省で地方法人課税に関する検討会が令和4年8月から始まったようですね。資料はリンク先です。

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/chihou_hojinzei_r04/index.html

こちらの全体版配布資料の12/35に、地方税の一つである事業税について、外形標準課税の対象となる法人を再検討するような旨の記述があります。現状、外形標準課税は、資本金等の額が1億円を超える法人に課税されます(地方税法72条の2参照。ただし、公益法人法人等の特殊法人を除く。計算方法は違うが、ガス供給業や電気供給業を行う法人も含む。)

外形標準課税とは、簡単にいうと、「所得」がなくても、資本金等の額、人件費、支払利息、不動産の支払賃料を基礎に、事業税が課税される仕組みです(ガス供給業や電気供給業の場合は収入割といって、収入(会計上の収益)ベース)。

全国的に著名な企業が減資を行い、資本金等の額を1億円以下にして、外形標準課税による課税を避ける事例が多発したから、見直しをかけるという意図なのでしょうか?