※ 論点整理を目的とした投稿ですので、事案の概要と論点をひとまとめにした箇条書きのみを記載しています。結論は、どこかの媒体で発表するかもしれませんし、発表しないかもしれません。
・ 地方自治法232条の2は、公共団体は「その公益上必要がある場合」においては寄附又は補助をすることができる旨を規定している
・公益性の判断であるが、地方公共団体が関係団体の赤字を補填するための補助金でもOKとされた事例がある
・「陣屋の村」補助金住民訴訟というもので、最高裁平成17年10月28日判決(民集 59巻8号2296頁)によると、「陣屋の村は、町の豊かな自然を生かし、住民に自然に親しむ機会を与えるとともに、都市との交流を促進するという目的で設置された農林漁業体験実習施設、食堂、宿泊施設等から成る公の施設であり、振興協会は、陣屋の村の管理及び運営の事業を行うことを目的として町により設立されたものであって、町から委託を受けて専ら陣屋の村の管理及び運営に当たっているというのであるから、その運営によって生じた赤字を補てんするために補助金を交付することには公益上の必要があるとした町の判断は、一般的には不合理なものではないということができる。
そして、本件条例が陣屋の村を設置することとした目的等に照らせば、仮に振興協会による事務処理に問題があり、そのために陣屋の村の運営収支が赤字になったとしても、直ちに、上記目的や陣屋の村の存在意義が失われ、町がその存続を前提とした施策を執ることが許されなくなるものではないというべきである。そうすると、本件雇用によって赤字が増加したという事情があったからといって、それだけで、陣屋の村を存続させるためにその赤字を補てんするのに必要な補助金を振興協会に交付することを特に不合理な措置ということはできない。
加えて、前記事実関係等によれば、Aは、振興協会の理事長として、食堂営業の収入を増加させるため和食調理の腕の立つ調理員を採用すべきであると判断して本件雇用を決定したものであり、人件費の増加による赤字の発生の防止についても一応の見通しを持っていたものというべきであって、同人が本件雇用をしたことや、本件雇用をした平成8年9月から平成8年度の末日である平成9年3月末日までの間に他の調理員を解雇する措置に踏み切らなかったことが、経営上の裁量を逸脱した放漫な行為であったとはいえない。」として、公益性がないものとは言い切れない旨を示した
・というわけで、補助金の公益性というのはかなり幅広いような印象を受ける?
・ただ、裁判官の一人の反対意見もあり、地方公共団体の首長とこのような団体の代表者が同一の場合、議会で可決されたからといって直ちにOKとも言い切れず、実質的な審議が必要な点、補正予算で当初予算の2.5倍の金額が可決されたというのに、実質的な審議を経ないまま可決されたので、直ちにOKとは言い切れないという。
・地方公共団体の議会は会議録があるので、実質的な審議が行われたかどうかは事後的に判明する
・ただ、予算を可決する段階で実質的な審議を行えるかどうかというと実務的に無理な話であり、予算が策定される前に実質的な審議を行っておき、安易な予算措置を許さない姿勢が必要ではないか?