事業所得と雑所得

話題になった300万円通達ですが、通達本文以外にも解説がついているので、こちらも見ておきたいところです。

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/221007/pdf/02.pdf

こちらの解説を見ると、帳簿さえつけていれば事業所得と無条件に認められるのではなく、収入に対する経費の割合が高い、マイナスの所得が継続している場合等は、雑所得と認定される可能性を示唆しています。

というわけで、帳簿を付けていたとしても、事業の必要経費とは思われない経費を多額に計上しているだけであれば、雑所得にされる可能性も十分あることでしょう。

なお、開業数年間は儲けが出ない商売というのもありますので、その場合はその旨を説明できるよう準備しておくのが無難と思います。事業概要の説明ですね。

固定資産評価審査委員会の委員に職務上の注意義務違反が認められないとした原審の判断に違法があるとされた事例

最高裁令和4年9月8日第一小法廷判決です。固定資産評価に携わる職員(公務員)の注意義務違反に言及した判決はよく見ますが、固定資産評価審査委員会の委員の注意義務違反に言及した判決は珍しいですね。

固定資産評価審査委員会の委員は士業や学識経験者が就任するパターンが多いのですが、この事例では先例や文献がない評価方法を適用していたようですね。

地裁や高裁の判決文の入手が困難でしたが、あるデータベースから発見されたので、これからじっくりと読んでみようと思います。

原稿寄稿

消費税の本です。この中のごく一部ですが、私の原稿が入っています。著者は租税法業界で著名な酒井克彦先生です。

「税理士業務に活かす通達のチェックポイント―消費税軽減税率Q&A等の検討と裁判事例精選10―」というタイトルです。

暦年贈与の特例がなくなる?

昨今の相続税・贈与税の一体化で、いわゆる暦年贈与特例(1年間に110万円までの贈与は非課税)がなくなるのでは?という話題です。

仮になくなる場合は毎年12月ごろに発表される税制改正大綱で何らかの示唆があるので、そこに気をつければいいかと。例えば、住宅借入金控除の割合が1%→0.7%になりましたが、改正が発表される前の税制改正大綱で含みがある記述がありました。

外形標準課税、資本金の額以外の基準検討

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC0755B0X01C22A0000000/

減資を行って法人事業税の外形標準課税を回避してきた「大企業」が多かったですが、とうとうメスが入る方向なんですかね。同日の会合で総務省は想定される指標として「資本金と資本準備金の合算額」「純資産」「従業員数」などを示しているようです。

このうち、従業員数というのは外形標準課税の計算要素の一つである「収益配分額」の関連ですかね。収益配分額とは、非常に簡単にいうと、報酬給与額(いわゆる人件費)、純支払利子(受取りから支払いを差し引いたもの)、純支払賃借料(利子と同じ考え方)の合計額であり、従業員数以外にも借入金の多寡や設備のレンタル・リースの件数・金額規模なども影響してきます。

というわけで新しい基準を設けてもいたちごっこになるのが想定されます。どうしても課税したいというのであれば、基準を設けずに一律に広く、しかし、税率は低く課税するのが分かりやすいようにも思いますが…

副業300万円通達修正

300万円以下の所得だったら反証がない限り、事業所得ではなく雑所得とする通達案が出ていましたが・・・

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000242043

300万円の金額基準が消えましたね。その代わりに帳簿書類の保存の有無という文言が加わりました。パブリックコメントという形で公に募集していたのですが、パブリックコメントに基づき内容を見直すのって珍しいですね。