日本公認会計士協会、訂正ラッシュ

公認会計士は日本公認会計士協会が定めたルールに従って、業務を行うわけですが、最近、そのルールの訂正が行われたという連絡が立て続けに届いています。

訂正の内容を見ると、明らかな誤字脱字のほか、ひらがな表記を漢字表記にする訂正や、読点の追加等、ものすごく細かい訂正も目立ちます。ここまでの徹底した訂正ラッシュは、直近20年くらいでは見たことがありません。私もルールの規定に携わったことがあり、ひらがな表記する表現と漢字表記にする表現をそれぞれ、指示されましたが、読点の有無の指示までは記憶がありません。

何か方針の大転換があったのでしょうか・・・

仕訳テストの留意点

10年ほど前の財務諸表監査から、仕訳を抽出して、当該仕訳に対して根拠資料との整合性を確かめるといった手続が重視されている。この手続はむやみやたらにやるものではなく、「リスクシナリオ」といって、誤りや不正がある可能性が高いと判断する仕訳を抽出できるよう、抽出条件を決める必要がある。この抽出条件次第で、手続の量が変わるので、使える時間と有効性のバランスを考えて設定する必要がある。

なお、初学者は勘違いしがちであるが、リスクシナリオに基づき抽出された仕訳は全件手続を実施しないと、実効性のない手続とされてしまう。抽出された仕訳が多すぎると判断した場合は、サンプルで部分的に手続を実施するのではなく、リスクシナリオの練り直しが必要である。IT委員会実務指針第6号「ITを利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの識別と評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続について」に関するQ&A(IT委員会研究報告第53号)のQ27等を参照。

川重子会社が冷凍機検査書類に不適切データ

子会社の川重冷熱工業で、空調システム用として製造・販売した冷凍機の検査成績書類に実測していないデータを記載するなど不適切な行為があったと発表したそうです。1984年から2022年の期間で1950件に上るということです。記載が要求される項目が多すぎて手を抜くのが常態化していたというところでしょうか?

納品書の偽造ではなく、検査成績書類の偽造ということであれば、会計監査で閲覧するような書類ではないのでしょうか?

独立行政法人監査における経済性及び効率性等

公会計委員会実務指針第3号「独立行政法人監査における経済性・効率性等」が改正されたので公表されたというもの。改正内容は用語の平仄が中心。

経済性・効率性(及び有効性)といえば、3Eと呼ばれ、地方公共団体に対する包括外部監査等ではおなじみの視点であるが、独立行政法人監査は当該法人の財務諸表の適正性を検証する監査であるため、3Eはメインの視点とはならない。

包括外部監査は、「監査」という括りでは同じではなるが、地方公共団体の財務諸表の適正性の検証がメインではなく、ある特定の事柄に関し、指摘や意見を提示するものであるため、取扱いが異なる。

自動化された業務処理統制の例

IT委員会実務指針第6号「ITを利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの識別と評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続について」関係。自動化された業務処理統制の例示を要約したものです。

・エディット・バリデーション・チェック(数字の入力が必要なのに文字を入力すると、入力を拒否する機能等)

・マッチング(マスタに登録されていないデータを入力しようとすると、入力を拒否する機能等)

・コントロール・トータル・チェック(入力データと出力データの合計を比較し、不一致の場合エラーを出す機能等)

・アクセス・コントロール(いわゆるユーザIDとパスワードによるアクセス制限等)

・自動計算等

ITの利用に関する概括的理解

・IT委員会実務指針第6号「ITを利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの識別と評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続について」に関するQ&A(IT委員会研究報告第53号)のQ3関連。

・評価ポイントは4つ。

・①ITの利用度、②情報システムの安定度、③情報システムの前年度からの重要な変更、④過年度の監査におけるITに関連する内部統制上の不備の4つ。

・リスク評価を慎重にやる場合→基本は利用度で判断。ただし、➀情報システムが不安定、②情報システムに重要な変更あり、③IT関連の内部統制上の不備ありの場合も留意。

・ITの利用に関する概括的理解は、ITの利用に伴う重要な虚偽表示に関する潜在的リスクの多寡にかかわらず実施する必要がある点も留意。

IT委員会研究報告第57号「ITの利用の理解並びにITの利用から生じるリスクの識別及び対応に関する監査人の手続に係るQ&A」

・従来のIT委員会実務指針第6号「ITを利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの識別と評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続について」及びIT委員会研究報告第53号「IT委員会実務指針第6号「ITを利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの識別と評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続について」に関するQ&A」が統合されて、題名の57号になるというもの。

・監査基準委員会報告書315「重要な虚偽表示リスクの識別と評価」の改正の伴うもので、新315が適用される2023年3月決算に係る財務諸表の監査及び2022年9月に終了する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査以降は、57号が適用。

・6号と53号の違いがよくわからないまま修了考査を受ける受験生も多かったかもしれず、57号のQ&Aに統一されて歓迎の受験生は多いかも?

・一方、6号を理解すれば財務諸表監査におけるITについて体系的に理解できたという面もあり、Q&Aのみでは、学習は簡単でも、試験後の実務においては、困る面もあるかも?

・財務諸表監査におけるITの骨格ともいえる部分がスリムになったので、他のIT関係研究報告にもそれなりに注力する必要が出てくるか?(今までは6号と53号をおさえていれば合格点は狙えた。)