事業所得と雑所得

話題になった300万円通達ですが、通達本文以外にも解説がついているので、こちらも見ておきたいところです。

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/221007/pdf/02.pdf

こちらの解説を見ると、帳簿さえつけていれば事業所得と無条件に認められるのではなく、収入に対する経費の割合が高い、マイナスの所得が継続している場合等は、雑所得と認定される可能性を示唆しています。

というわけで、帳簿を付けていたとしても、事業の必要経費とは思われない経費を多額に計上しているだけであれば、雑所得にされる可能性も十分あることでしょう。

なお、開業数年間は儲けが出ない商売というのもありますので、その場合はその旨を説明できるよう準備しておくのが無難と思います。事業概要の説明ですね。

副業の所得区分による影響

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=410040064

先日も投稿したこちらの件。仮に事業所得ではなく、雑所得にされてしまった場合の影響を考えてみました。大半が税額が増える方向への影響です。

・事業所得がマイナスになった場合、給与所得と当該損失を相殺できなくなる(いわゆる損益通算ができなくなる)

・青色申告で申告する場合、55万円又は65万円の特別控除が受けられなくなる(雑所得では青色申告できません)

・青色事業専従者給与の計上ができなくなり、必要経費が減る(ただし、これは上記の特別控除と異なり、計算上だけで税額が減るのではなく、給与の支給により現金が出ていく話です。というわけで、税額が増える方向への影響はありますが、資金繰りへの影響はないといえます。)

・貸倒引当金の計上ができなくなり、必要経費が減る(いわゆる掛け商売、信用商売のような事業でない場合は、元から計上していないので影響ありません)

・純損失の繰越し又は繰り戻し(事業所得で損失が出た場合、翌年度以降得られるであろう所得と相殺し、翌年度以降所得があった場合の税額が減ることになります。また、前年から青色申告しており、前年所得計上、当年損失(所得がマイナス)の場合、前年に支払った所得税額の還付が受けられます。)

・銀行等から融資を受ける場合の年収額に含めてもらえなくなる可能性あり(雑所得だと年収に含めてもらえず、事業所得扱いされる場合に比べ、年収額が減ってしまうことから希望額の融資が受けにくく懸念あり)

色々と挙げてみましたが、最後の融資の受ける場合の年収額に含めてもらえなくなる可能性があるというのは切実かと思います。前回の投稿と繰り返しになりますが、300万円を超えなかったら一律に雑所得とされてしまうような実務にはならないと考えられるため、「事業」だという反証ができるよう準備しておく必要があります。

副業の所得区分

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=410040064

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000239212

所得税基本通達の変更案に、「収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない限り、業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない」とあるため、今まで副業の所得を事業所得で処理していたのが雑所得にされちゃうんじゃないかという話があるようです。

 事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)とされているだけです(所得税法27条1項)。また、より具体的な内容は最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決で示されており、「事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」とされ、所得税法の条文と同様に、金額の縛りはありません。最高裁の定義のうち、「自己の計算と危険」というのが分かりにくい表現ですが、収入を稼ぐためのコストやリスクを自己で負担するようなものと捉えてもらえれば十分です。

 所得税基本通達は法律ではないですし、また、そもそも「特に反証のない限り」とあるため、300万円を超えなかったら一律に雑所得とされてしまうような実務にはならないと考えます。そのため、架空の収入及び経費を計上して、所得金額を変えずに、収入金額だけ300万円を超えさせるようなことはやめておきましょう。課税当局はその程度の不正は想定しています。仮にこのような不正をやり、課税当局に認識されてしまうと、懲罰的な多額の課税が待っているので、くれぐれもやらないように・・・

4630万円を誤って振り込まれた場合の所得区分

※ 論点整理を目的とした投稿ですので、事案の概要と論点をひとまとめにした箇条書きのみを記載しています。結論は、どこかの媒体で発表するかもしれませんし、発表しないかもしれません。

・所得区分は、一時所得か雑所得と思われるが、「偶然」のとらえ方で変わる。

・一時所得の場合、基礎となる所得の金額が実際の所得を1/2にした金額に対して税率を掛けて計算となるので、一時所得とするのは案外ハードルが高い。

・というわけで、税理士に相談せず、安易に一時所得として申告するのはおすすめできない。

・今回の4630万円の場合は、振り込まれた人が逮捕されてしまったので、一時所得でいう「偶然」は否定されると思われる?

・返済の意思を示しており、そうであれば、所得ではなく借入金と考え、課税対象とならないことも考えられるが、いきなり引き出してオンラインカジノで浪費してしまったという事実をどうとらえるか?