取締役が役務の対価として付与されたストック・オプションを使って得た利益の所得区分

・最初に最高裁で判示されたのは、最高裁平成17年1月25日第三小法廷判決。

・これは、一時所得か給与所得かで争われ、給与所得になったもの

・ストック・オプションは、会社役員等に、株式を一定の行使価格で購入できる権利を付与するものであるが、当該取締役やストック・オプションを駆使して自社株を市場価格より割安に購入し、これを時価で売却して利益を得たというもの。

・この際の売却益が給与所得と認定された。以前は、ストック・オプションを使って得た利益は一時所得になるという国の取扱いがあったが、後出しじゃんけんのように、ひっくり返されてしまった事例

・株式の売却益は偶然性がありそうに見えるが、これだけでは一時所得の要件をみたさないと認定されてしまった

・このように、国の取扱い変更が遡及的に否定される事例もあり、以前に書いたような通達の取扱いが急に変わる可能性もあるので、留意したいところ。

・当該売却益を得られた原因としては、適切なタイミングで売却したことよりも、そもそも割安に購入できる権利を、役員としての役務の対価としてもらえたことに着目したので、給与所得と認定した?

弁護士顧問料事件(最高裁判所昭和56年4月24日第二小法廷判決)

※ 論点整理を目的とした投稿ですので、事案の概要と論点をひとまとめにした箇条書きのみを記載しています。結論は、どこかの媒体で発表するかもしれませんし、発表しないかもしれません。

判決文はこちら。https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/332/056332_hanrei.pdf

・所得税法の事業所得と給与所得の定義を示した最高裁判例

・事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいい、これに対し、給与所得とは雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。なお、給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかか重視されなければならない。

・給与所得→①雇用契約or②雇用契約に似た原因に基づき、使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価?

・給与所得の判断に当たっては、「空間的、時間的な拘束」というのが重視される?

・現在の労務提供形態は多様化しており、使用者と実際に一度も会わないまま労務提供が完結するのも普通になっている

・そんな中でなお書きにある「空間的、時間的な拘束」というのをどうとらえるべきか?

・そもそも、なお書きは雇用契約であれば検討の必要がない話で、「業務委託契約」や口約束による労務提供等に検討する話ではないか?

・今回挙げた以外の判例では、所得を得るための損金の負担状況、使用者からの独立性等を総合的に勘案して判断されている?

・また、事業所得、給与所得いずれにも該当しない労務提供による所得も考えられるが、現行法では雑所得しか区分できる所得はない