インボイス経過措置の条文

今回は、80%控除の条文です。消費税法改正附則(平成28年3月31日法律第15号)ですね。リンクは以下です。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=363AC0000000108_20231001_505AC0000000003#428AC0000000015-Sp

この52条が80%控除(インボイス発行事業者以外の者から課税仕入れについて、インボイスがなくても80%控除を一定期間認める経過措置)です。

まず、52条の1項をそのまま記載します。

第五十二条 事業者(新消費税法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。以下この条及び次条において同じ。)が、五年施行日から五年施行日以後三年を経過する日(同条第一項において「適用期限」という。)までの間に国内において行った課税仕入れ(新消費税法第三十条第一項の規定の適用を受けるものを除く。次条第一項において同じ。)のうち、五年改正規定による改正前の消費税法(以下この条及び次条において「旧消費税法」という。)第三十条の規定がなお効力を有するものとしたならば同条第一項の規定の適用を受けるものについては、同条第九項に規定する請求書等又は当該請求書等に記載すべき事項に係る電磁的記録(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成十年法律第二十五号)第二条第三号に規定する電磁的記録をいう。次項並びに次条第一項及び第二項において同じ。)を新消費税法第三十条第九項に規定する請求書等とみなし、かつ、当該課税仕入れに係る支払対価の額(同条第八項第一号ニに規定する課税仕入れに係る支払対価の額をいう。次条第一項及び附則第五十三条の二において同じ。)に百十分の七・八(当該課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等(新消費税法第二条第一項第九号の二に規定する軽減対象課税資産の譲渡等をいい、消費税法第七条第一項、第五条の規定による改正後の同法第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。第三項及び次条第一項において同じ。)に係るものである場合には、百八分の六・二四)を乗じて算出した金額に百分の八十を乗じて算出した金額を新消費税法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る消費税額とみなして、同条の規定を適用する。この場合において、同条第八項第一号ハ中「である旨)」とあるのは、「である旨)及び所得税法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第十五号)附則第五十二条第一項の規定の適用を受ける課税仕入れである旨」とする。

これだと、よくわからないので、一部の文章を削ってみます。

第五十二条 事業者・・・が、五年施行日から五年施行日以後三年を経過する日・・・までの間に国内において行った課税仕入れ(新消費税法第三十条第一項の規定の適用を受けるものを除く。・・・)のうち、五年改正規定による改正前の消費税法・・・第三十条の規定がなお効力を有するものとしたならば同条第一項の規定の適用を受けるものについては、同条第九項に規定する請求書等・・・を新消費税法第三十条第九項に規定する請求書等とみなし、かつ、当該課税仕入れに係る支払対価の額・・・に百十分の七・八・・・を乗じて算出した金額に百分の八十を乗じて算出した金額を新消費税法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る消費税額とみなして、同条の規定を適用する。・・・

ということで、5年施行日(令和5年10月1日)から3年を経過する日(令和8年9月30日)までの課税仕入れについては、インボイスを入手していなくても、改正前の消費税法の規定に基づく請求書等を入手していれば80%控除を認めますよということになります。

ただし、いくつか注意点があります。

一部削除後の条文の2行目に「新消費税法第三十条第一項の規定の適用を受けるものを除く。」とあり、これはインボイス発行事業者が交付したインボイスのことを指します。したがって、①インボイス発行事業者からインボイスがもらえなかった、②インボイス発行事業者から請求書等はもらったが、インボイスとしての要件を満たしていなかったといった場合は、この経過措置の対象外となる可能性があるため注意です。内容を修正してもらうか、交付を求めるということになります。

一部削除後の条文の5行目に「同条第九項に規定する請求書等・・・を新消費税法第三十条第九項に規定する請求書等とみなし」とあり、請求書等の入手が必要です。インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れについて、帳簿に記載するだけで80%控除を認めるという規定ではないため、インボイスには該当しないにしても、帳簿に記載するだけで仕入税額控除がOKとされている取引に該当しない限りは、請求書等を入手する必要があります。

インボイス、もらえなかったらどうなる?

経過措置の条文を見ていたら、インボイス登録していない人との取引よりも、インボイス登録しているけど、インボイスをくれない人との取引の方が仕入税額控除が大変だという認識になりました。

ちなみに、インボイスをくれないというのは、くれたはいいけど、インボイスの記載事項を満たしていないとか、間違ったインボイスを訂正してくれない場合も含みます。

インボイス制度は「地獄の選択」 アニメ声優の3割弱が廃業を検討

https://mainichi.jp/articles/20230907/k00/00m/040/186000c

電子帳簿保存法は、このような声を受けてなのか?いったん適用延期になりましたが、インボイス制度はどうなるんでしょうね。

「2割特例」の経過措置をさらに延期するくらいはあるのでしょうか?

ちなみに「2割特例」とは、「免税事業者」だけどインボイス登録して「課税事業者」になった人向けの負担軽減措置です。

簡単にすると、消費税の申告をするさいに「計算上もらったことになる消費税」が30万円だったら、その8割を「計算上支払ったことになる消費税」にしましょうということです。この計算だと、30-30×80%=6で、6万円の消費税を納付することになります。税務署に行けば無料で教えてもらえるくらいの簡単な計算だと思います。

消費税の負担が増えてしまいますが、登録しないと仕事がもらえなくなるかもしれないという状況ならば、消費税の負担以上の収入が得られなくなるかもしれません。

2割特例適用の場合の貸倒れ関係の処理

貸倒損失に係る消費税額→2割特例を適用後の金額から貸倒損失に係る消費税額を引く。

貸倒れにしたけど回収できた売掛金の額に係る消費税額→回収した課税期間における、課税標準額に対する消費税額に加算、加算後の金額で2割特例を適用

新消費税法基本通達21-1-2より。貸倒損失に係る消費税額を計上漏れしないように注意が必要ですかね。

出来高検収書とインボイス

出来高検収書をこちらで作成して、外注工事業者から確認をとっている場合。外注業者がインボイスを発行している限りは、消費税の仕入税額控除に影響はないが、外注工事業者が外注した工事の完成時にインボイスを発行しなくなっていたら、消費税の仕入税額控除が満額引けなくなってしまうというお話。新消費税法基本通達11-6-7に出てますね。

過去に出来高ベースで満額控除していて、いざ完成時になってインボイスを発行しなくなっていたら、現在のところは満額でなく80%控除に切り替えるということですね。すでに出来高検収した物も含めてすべてを。