四半期開示の論点

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO65279410Z11C22A0EE9000/

上記記事より。

➀決算短信を作成するかどうか→四半期報告書がないということであれば、決算情報を知る手段がなくなるため、必要。

②決算短信の罰則→必要。粉飾ありの情報が開示されたら有益どころか有害

③決算短信に対する監査法人のレビュー→従来の四半期報告書に対するレビュー報告書のようなもの。罰則と合わせて有益な情報開示の観点からは必要だが、決算短信に対するレビュー報告書というのは違和感あり。後述のように、第2四半期について中間監査復活でいい。

④決算短信の開示内容の充実→現状で十分。

⑤第2四半期の開示書類や監査法人の保証のあり方→第2四半期のみ半期報告書を作成して、これに対して中間監査報告書をつけるか、レビュー報告書をつけるかということですかね。中間監査推奨ですね。今の四半期レビューだと、監査法人の閑散期が出てこないので、疲弊度合いが増すばかり・・・。なお、第2四半期に半期報告書があるのであれば、決算短信は第1四半期・第3四半期に比べて超簡素化してもいいと思います。財務諸表の段階損益とか流動資産・流動負債といった残高項目の合計額だけ開示するような(会社法の決算公告のイメージ)。

結論

第1四半期・第3四半期→現在の決算短信で求められるレベルの情報を開示。監査・レビューはないが、虚偽表示には罰則あり。

第2四半期→決算短信は会社公告レベルの情報を開示。半期報告書で第1四半期・第3四半期レベルの情報を開示し、監査対象とする。虚偽表示の罰則はもちろんあり。ついでにですが、決算期の決算短信も会社公告レベルの情報開示で十分だと思います。有価証券報告書を見れば必要な情報が掲載されているので・・・

IT委員会実務指針等の廃止について

https://jicpa.or.jp/specialized_field/20221017uzy.html

実務での影響は少ないかと思いますが、公認会計士試験の修了考査の受験生は大変ですね。廃止された規定のうち、IT委員会実務指針第6号「ITを利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの識別と評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続について」は財務諸表監査におけるIT監査の体系を示したもの、IT委員会研究報告第53号「IT委員会実務指針第6号「ITを利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの識別と評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続について」に関するQ&A」は実務指針6号をQ&A方式にしたものでした。

この6号と53号が廃止され、IT委員会の研究報告としては、

IT委員会研究報告第 57 号「ITの利用の理解並びにITの利用から生じるリスクの識別及び対応に関する監査人の手続に係るQ&A」だけになりました。

体系的理解の方は、監査基準委員会報告書 315「重要な虚偽表示リスクの識別と評価」でやることになったようです。

修了考査は12月にありますが、このタイミングで廃止とは受験生は勉強がやりづらいですね。

不正会計防止へ制度見直し 内部統制、訂正に監査義務も

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0917N0Z01C22A0000000/

これは証券取引所に上場している企業に限定される話題です。見出しだけでは意味がわからず、訂正有価証券報告書を提出し、改めて監査を実施した事例を見てみました。通常の監査報告書だと「独立監査人の監査報告書及び内部統制監査報告書」という見出しなのですが、訂正有価証券報告書に対する監査報告書は「独立監査人の監査報告書」となっており、「内部統制監査報告書」の提出義務はないのですね。

内部統制監査報告書の監査対象は、内部統制報告書なのですが、この報告書、会社ごとの個性はほとんど見られず、定型に近い文言が5ページ程度記載があるのみなんですよね。

これを訂正時の監査対象としたからといって、企業側が不正を避けるのかというと・・・うーんという印象です。

公認会計士試験の所感

会計学(午後)の問題で、国際会計基準の問題が出たようですね。受験予備校でもある程度はやっており、日本の会計基準も国際会計基準に近い内容にはなりつつありますが、それでも厳しいと感じた受験生が多そう。実務でも、国際会計基準を適用している上場企業は多くなく、それほど馴染みがないといえばないですね。

監査論の第2問は、公認会計士試験に合格して実務経験を積んだ人が受ける修了考査の問題かと思いました。実務経験がない受験生にとっては相当難しいような。監査基準を覚えているだけでは対応できず、そもそも監査に対する潜在能力が試される感じですね。

日本公認会計士協会、訂正ラッシュ

公認会計士は日本公認会計士協会が定めたルールに従って、業務を行うわけですが、最近、そのルールの訂正が行われたという連絡が立て続けに届いています。

訂正の内容を見ると、明らかな誤字脱字のほか、ひらがな表記を漢字表記にする訂正や、読点の追加等、ものすごく細かい訂正も目立ちます。ここまでの徹底した訂正ラッシュは、直近20年くらいでは見たことがありません。私もルールの規定に携わったことがあり、ひらがな表記する表現と漢字表記にする表現をそれぞれ、指示されましたが、読点の有無の指示までは記憶がありません。

何か方針の大転換があったのでしょうか・・・

仕訳テストの留意点

10年ほど前の財務諸表監査から、仕訳を抽出して、当該仕訳に対して根拠資料との整合性を確かめるといった手続が重視されている。この手続はむやみやたらにやるものではなく、「リスクシナリオ」といって、誤りや不正がある可能性が高いと判断する仕訳を抽出できるよう、抽出条件を決める必要がある。この抽出条件次第で、手続の量が変わるので、使える時間と有効性のバランスを考えて設定する必要がある。

なお、初学者は勘違いしがちであるが、リスクシナリオに基づき抽出された仕訳は全件手続を実施しないと、実効性のない手続とされてしまう。抽出された仕訳が多すぎると判断した場合は、サンプルで部分的に手続を実施するのではなく、リスクシナリオの練り直しが必要である。IT委員会実務指針第6号「ITを利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの識別と評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続について」に関するQ&A(IT委員会研究報告第53号)のQ27等を参照。

川重子会社が冷凍機検査書類に不適切データ

子会社の川重冷熱工業で、空調システム用として製造・販売した冷凍機の検査成績書類に実測していないデータを記載するなど不適切な行為があったと発表したそうです。1984年から2022年の期間で1950件に上るということです。記載が要求される項目が多すぎて手を抜くのが常態化していたというところでしょうか?

納品書の偽造ではなく、検査成績書類の偽造ということであれば、会計監査で閲覧するような書類ではないのでしょうか?