ヘッジ会計続き

昨日言及した、80%-125%の話。法人税法上の規定ですが、法人税法施行令121条の2に規定されています。

(繰延ヘッジ処理に係るヘッジが有効であると認められる場合)
第百二十一条の二 法第六十一条の六第一項(繰延ヘッジ処理による利益額又は損失額の繰延べ)に規定する政令で定める場合は、ヘッジ対象資産等損失額を減少させるためにデリバティブ取引等を行つた時から当該事業年度終了の時までの間のいずれかの有効性判定(同条第三項の規定により、デリバティブ取引等を行い、かつ、同項に規定する記載をしていたものとみなされた内国法人にあつては、同項に規定する適格合併等により当該デリバティブ取引等を当該内国法人に移転した同項に規定する被合併法人等が行つた有効性判定を含む。)において、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める割合がおおむね百分の八十から百分の百二十五までとなつている場合とする。

というわけで、法令ではありますが、「おおむね」という規定ではあります。

ヘッジ会計

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6513298

きじでは詳細がわからないですが、同社の有価証券報告書を見る限り、デリバティブ取引というのは、商品スワップ取引ではないでしょうか。

商品スワップ取引は、原材料費の高騰による費用増加をヘッジする手段のようです。この場合、会計上も税務上も、ヘッジ対象である原材料費の高騰幅と、ヘッジ手段である商品スワップ取引の評価益の増加幅が同じような変動状況であれば、商品スワップ取引の評価益を損益として認識しなくてOKというヘッジ会計です。

「同じような変動状況」というのは、具体的な数値は会計上も税務上も、「おおむね」80%から125%の範囲内に収まっていればOKというものです。例えば、原材料費の高騰幅と商品スワップ取引の評価益の増加幅が、ともに150であれば、商品スワップ取引の増加幅150÷原材料費の高騰幅150×100%=100%となります。

原材料費の高騰幅150に対し商品スワップ取引の評価益の増加幅120の場合は、120÷150×100%=80%、原材料費の高騰幅120に対し商品スワップ取引の評価益の増加幅150の場合は、150÷120×100%=125%と、ヘッジ手段とヘッジ対象の変動幅について2割ほどのずれまでなら、商品スワップ取引の評価益を損益として認識しなくてOKとされていることになります。

今回のニュースに戻りますが、見解の相違の原因は、「同じような変動状況(ヘッジの有効性判定)」の解釈の相違っぽいと推定するのですが、どうなんでしょうか。「申告漏れ」とされた期について、80%-125%の範囲をわずかに超えていて、会計上は「おおむね」に該当するとして容認したけど、税務上は「おおむね」である点を否定されてしまったみたいなイメージでしょうか。国税不服審判所案件となったということですので、今後は詳細が明らかになるでしょう。