消費税法上の帳簿

世間はインボイス(請求書等)の話題で持ちきりですが、仕入税額控除に当たっては、適切な帳簿の作成も必要です。東京地裁平成9年8月28日判決では、「法は、仕入税額控除の要件として保存すべき法定帳簿には、課税仕入れの年月日、課税仕入れに係る資産又は役務の内容及び支払対価の額とともに真実の仕入先の氏名又は名称を記載することを要求しているというべきである。」と判示しているので、帳簿への記載もいいかげんにできないということです。

この判決は東京高裁平成10年9月30日判決から、最高裁平成11年2月5日第二小法廷決定まで行っているので、重要です。

国税・地方税における発信主義と到達主義

 発信主義というのは、郵便書留等で、送付された記録がわかる文書であれば、その発信記録をもって受け付けるという考え方です。というわけで、例えば月末が休日かつ期限となっている申告書等を税務署に提出したい場合、郵便書留等で月末に送付されたことがわかれば、税務署が実際に申告書等を確認したのが翌月となっても、月末をもって提出されたものとみなす考え方です(国税通則法22条、地方税法20条の5の3)。インボイスがらみの書類も同じですね。一方で、到達主義というのは実際に書類等を受領した、確認した日を提出日とする考え方です。具体的な書類は、国税庁のサイトにあります。

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/teishutsujiki/policy.htm

 なお、送り方ですが、郵便又は信書便とされています。信書便業者の一覧は総務省のウェブサイトにあります。

https://www.soumu.go.jp/yusei/tokutei_g.html

法人が暗号資産を保有していたら

期末に評価替えが必要になります。取得価額と評価額との差額は、益金又は損金になります。この評価替えは、翌期首に洗い替え処理を行い、なかったことになりますが。期末の評価損益は、益金又は損金として法人税の計算に反映されます。したがって、評価益が出ていれば、法人税の納付額を増やすことになります。これは、現金の流入を伴わない益金であり、資金繰りに影響が出るため留意が必要です。

インボイス登録

9/30は土曜日なので、申請は9/29までにしないと、10/1付けの登録に間に合わないので注意です。インボイスの登録は任意なので、税金の納付のように法律上の義務に基づく期限ではないことから、休日中の申請は、直前営業日までに届いたとみなしてもらえず、休日明けの営業日になってしまうため、留意が必要です。国税通則法10条2項を読むと「期限」とだけ書いてあるので、勘違いする人が多いのですが、この「期限」というのは、インボイス登録など任意の手続に関する期限は対象外なので注意です。

買い物で付与されるポイントが値引き?

https://www.tkc.jp/consolidate/webcolumn/contribution/column202309_1/

違和感があります。ポイントって支払手段じゃないんですかね。買い物したついでに、付与されるので、その時点での経済的利益として不課税収入扱い。ポイント使用時は、そのときの買い物代金の支払いに充当しただけで、ポイント使用時の買い物の対価には何の影響がないものと思っているのですが・・・

そのお店独自のポイントなら、まだ値引きといえないこともないですが、共通ポイントということであれば、なおさら違和感があります。

高速道路料金インボイス

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0521-1334-faq.pdf

高速道路料金については、利用証明書ではなく、クレジットカード明細書をインボイスとしても差し支えないというQAが追加されました。

通達どころかQAで法律よりも緩和した取扱いが発表されたんですね。ところで、昨日触れた80%控除については、緩和するのはきついと思います。法律にインボイス等を入手しないと仕入税額控除をできないとしている以上、インボイスがなくてもよかったり、間違ったインボイスでも経過措置が適用できるとして差し支えないとは、公式見解として中々いえないでしょう。何のためにインボイス制度を導入したんだという声が上がるでしょうし。

インボイス経過措置の条文

今回は、80%控除の条文です。消費税法改正附則(平成28年3月31日法律第15号)ですね。リンクは以下です。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=363AC0000000108_20231001_505AC0000000003#428AC0000000015-Sp

この52条が80%控除(インボイス発行事業者以外の者から課税仕入れについて、インボイスがなくても80%控除を一定期間認める経過措置)です。

まず、52条の1項をそのまま記載します。

第五十二条 事業者(新消費税法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。以下この条及び次条において同じ。)が、五年施行日から五年施行日以後三年を経過する日(同条第一項において「適用期限」という。)までの間に国内において行った課税仕入れ(新消費税法第三十条第一項の規定の適用を受けるものを除く。次条第一項において同じ。)のうち、五年改正規定による改正前の消費税法(以下この条及び次条において「旧消費税法」という。)第三十条の規定がなお効力を有するものとしたならば同条第一項の規定の適用を受けるものについては、同条第九項に規定する請求書等又は当該請求書等に記載すべき事項に係る電磁的記録(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成十年法律第二十五号)第二条第三号に規定する電磁的記録をいう。次項並びに次条第一項及び第二項において同じ。)を新消費税法第三十条第九項に規定する請求書等とみなし、かつ、当該課税仕入れに係る支払対価の額(同条第八項第一号ニに規定する課税仕入れに係る支払対価の額をいう。次条第一項及び附則第五十三条の二において同じ。)に百十分の七・八(当該課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等(新消費税法第二条第一項第九号の二に規定する軽減対象課税資産の譲渡等をいい、消費税法第七条第一項、第五条の規定による改正後の同法第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。第三項及び次条第一項において同じ。)に係るものである場合には、百八分の六・二四)を乗じて算出した金額に百分の八十を乗じて算出した金額を新消費税法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る消費税額とみなして、同条の規定を適用する。この場合において、同条第八項第一号ハ中「である旨)」とあるのは、「である旨)及び所得税法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第十五号)附則第五十二条第一項の規定の適用を受ける課税仕入れである旨」とする。

これだと、よくわからないので、一部の文章を削ってみます。

第五十二条 事業者・・・が、五年施行日から五年施行日以後三年を経過する日・・・までの間に国内において行った課税仕入れ(新消費税法第三十条第一項の規定の適用を受けるものを除く。・・・)のうち、五年改正規定による改正前の消費税法・・・第三十条の規定がなお効力を有するものとしたならば同条第一項の規定の適用を受けるものについては、同条第九項に規定する請求書等・・・を新消費税法第三十条第九項に規定する請求書等とみなし、かつ、当該課税仕入れに係る支払対価の額・・・に百十分の七・八・・・を乗じて算出した金額に百分の八十を乗じて算出した金額を新消費税法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る消費税額とみなして、同条の規定を適用する。・・・

ということで、5年施行日(令和5年10月1日)から3年を経過する日(令和8年9月30日)までの課税仕入れについては、インボイスを入手していなくても、改正前の消費税法の規定に基づく請求書等を入手していれば80%控除を認めますよということになります。

ただし、いくつか注意点があります。

一部削除後の条文の2行目に「新消費税法第三十条第一項の規定の適用を受けるものを除く。」とあり、これはインボイス発行事業者が交付したインボイスのことを指します。したがって、①インボイス発行事業者からインボイスがもらえなかった、②インボイス発行事業者から請求書等はもらったが、インボイスとしての要件を満たしていなかったといった場合は、この経過措置の対象外となる可能性があるため注意です。内容を修正してもらうか、交付を求めるということになります。

一部削除後の条文の5行目に「同条第九項に規定する請求書等・・・を新消費税法第三十条第九項に規定する請求書等とみなし」とあり、請求書等の入手が必要です。インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れについて、帳簿に記載するだけで80%控除を認めるという規定ではないため、インボイスには該当しないにしても、帳簿に記載するだけで仕入税額控除がOKとされている取引に該当しない限りは、請求書等を入手する必要があります。