配当予定額に関する会計監査

昨今、上場会社の違法配当が話題になりましたが、このことについて、会計監査人の任務懈怠(怠慢)があると主張する人がいるようです。会社法が施行されるまでの会計監査は、商法特例法に基づく監査を実施しており、そこでは、利益処分案を監査対象として適法かどうかを検証する必要がありました。しかし、現在では、利益処分案は監査対象ではなくなり、それに近いものとして、「配当予定額」の注記が監査対象となりました。

それでは、この配当予定額が、限度額を超えていたことが事後的に発覚したら、会計監査人の意見に影響があるのでしょうか。現行の会社法に基づく会計監査人の意見は、適法性について言及する箇所はなく、「適正性」があるかどうかで意見の内容が変わります。適正性というのは、会社の利害関係者が、出資や融資を行う際の判断に際して、決算書が適正な情報を与えているかどうかということが一つの側面としてあります。

ということは、配当予定額について、正確性のみの検証でよいか、それとも、違法配当の可能性までの検証を行うかどうかは、その時々の財務状況等により変わるものであり、配当予定額について違法配当の可能性までの検証を行わずに、結果的に違法配当が発生してしまったからといって、直ちに会計監査人に任務懈怠があるというのは、難しいのではないかと考えます。

会計上の後発事象

公認会計士の監査報告書が必要な法人で関係がある事項です。後発事象とは、決算日後に発生した会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす会計事象をいい、このうち、監査対象となる後発事象は、監査報告書日までに発生した後発事象のことをいいます。

後発事象というのは、法人にとって重要な得意先の倒産、法人が自然災害を受けて多大な損失を受ける可能性があるような事象をいいます。このような事象は、決算日後に発生したものなので、決算数値への影響は与えなくていいような印象があるかもしれないですが、場合によっては決算数値へ加味する必要があります。

例えば、重要な得意先の倒産などは、倒産したのは決算日後であっても、決算日前から、この得意先は業況が苦しかったものと考えて、この得意先に対する債権について、回収不能であると見込んだ会計処理を決算に反映することになります。貸倒引当金の計上というものです。

一方で、自然災害の場合は、決算日前から予兆があったと考えるのは困難と考えられます。したがって、このような後発事象は、決算数値へ加味せず、注記という形で、決算書の利用者に対して情報開示することになります。

金融庁、準大手監査法人の検査強化 2年ごとに立ち入り

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB11BS30R10C23A7000000/

今まで大手監査法人のみ2年に一度でしたが、今度からは準大手も2年に一度になるんですね。検査する側も人員を増やすんでしょうか?となると、大手や準大手からの出向者が増えて、ますます監査業務が逼迫する?

会長声明「公認会計士資格の適切な表記と集計の要請について」

https://jicpa.or.jp/specialized_field/20221226xqu.html

監査従事者の人数集計に間違いが発覚した話。先月末に3月決算会社の有価証券報告書が提出され、このリンク先にある記載がなされたのですが、この声明を受けて、各法人、どのような対応をしたのでしょうか。適切に対応したものと思いますが、手間が増えて大変ですね。

四半期報告書の廃止、いったん見送りへ

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA194S70Z10C23A6000000/

とりあえず、四半期レビューがすぐになくなるわけではないようですね。四半期レビューというのは、四半期報告書の検証作業ですが、レビュー手続のさらなる簡素化程度ならともかく、今更廃止してしまうというのは現実的でないように思います。