源泉徴収義務(報酬若しくは料金、契約金又は賞金)

給与で、所得税が源泉徴収されており、所得税を差し引いた額が支給されるのは、有名ですが、給与とは違う、報酬等でも源泉徴収されて支払われることが規定されています(所得税法204条1項)

 原稿、さし絵、作曲、レコード吹込み又はデザインの報酬、放送謝金、著作権(著作隣接権を含む。)又は工業所有権の使用料及び講演料並びにこれらに類するもので政令で定める報酬又は料金

 弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金

 社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)の規定により支払われる診療報酬

 職業野球の選手、職業けん闘家、競馬の騎手、モデル、外交員、集金人、電力量計の検針人その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金

 映画、演劇その他政令で定める芸能又はラジオ放送若しくはテレビジョン放送に係る出演若しくは演出(指揮、監督その他政令で定めるものを含む。)又は企画の報酬又は料金その他政令で定める芸能人の役務の提供を内容とする事業に係る当該役務の提供に関する報酬又は料金(これらのうち不特定多数の者から受けるものを除く。)

 キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設でフロアにおいて客にダンスをさせ又は客に接待をして遊興若しくは飲食をさせるものにおいて客に侍してその接待をすることを業務とするホステスその他の者(以下この条において「ホステス等」という。)のその業務に関する報酬又は料金

 役務の提供を約することにより一時に取得する契約金で政令で定めるもの

 広告宣伝のための賞金又は馬主が受ける競馬の賞金で政令で定めるもの

というわけで、2号にあるように、我々公認会計士に対する報酬も源泉徴収の対象となります。なお、「政令で定めるもの」という文言が目立ちますが、これは、所得税法施行令の320条を指します。

例えば、2号の場合だと、公認会計士や不動産鑑定士だけでなく、会計士補や不動産鑑定士補といった人たちの業務に関する報酬又は料金も含まれる旨が規定されています。

所得税法と法人税法の減価償却計算

所得税法49条1項

 居住者の…減価償却資産につきその償却費として第三十七条(必要経費)の規定により…必要経費に算入する金額は、…償却の方法の中からその者が当該資産について選定した償却の方法…に基づき…計算した金額とする。

法人税法31条1項

 内国法人の…減価償却資産につきその償却費として第二十二条第三項(各事業年度の所得の金額の計算の通則)の規定により…損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額…のうち、…償却の方法の中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法…に基づき…計算した金額…に達するまでの金額とする。

このように、法人税法の方は、「償却費として損金経理をした金額…のうち」とあるので、減価償却費の計上額は法人税の計算においては、任意で決められる、所得税法では、法人税法のような文言がないため、強制的に決まるということを主張する人もいるようです。

信託型ストックオプション、株価算定に新ルール

https://startup-db.com/magazine/category/research/stockoption_zeisei

ストックオプション行使時に得た利益は給与所得扱いとなることになりましたが、ストックオプション付与時の株価算定方法として、純資産価額ベースの方式も認めると明言したんですね。今まではそれができないので、外部専門家に委託して算定していたのですが、少しは簡便になるのでしょうか。

信託型ストックオプションによる株式譲渡益は給与所得?

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC206RJ0Q3A420C2000000/

日経新聞の有料記事です。日本の税制だと、「税制適格」とされるストックオプションを行使したことによる株式譲渡益でないと、株式譲渡益であっても給与所得扱いにされてしまいます。給与所得だと所得税と住民税を合わせて最大55%ほどが税金となってしまいます。

なお、「税制適格」の概要は経産省のページなどにあります。

https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/stock-option.html

対象者を増やしたり、権利行使期間を延長する等、一定の歩み寄りはあります。しかし、権利行使限度額が「年間1200万円を超えないこと」ということなど、株式上場を果たしてストックオプションの行使により、巨額の富を得たいような方々には不満があるのかもしれません。

103万円の壁の豆知識

103万円というのは、所得税の計算をするときに引いてもらえる基礎控除48万円と、給与から引いてもらえる給与所得控除55万円の合計額です。ですので、給与を103万円におさえていても、例えばフリマでの不用品売却等で得た収入があれば、所得税の納付が必要となる可能性があります。

トータル収入が103万円を超えても、収入が2400万円以下なら基礎控除48万円は変わらないですし、給与所得控除もいきなり0になるわけではなく、給与の増加に応じて、給与所得控除の金額も増加していきます。

住宅ローン控除の明細書が間違っていた件

https://www.e-tax.nta.go.jp/topics/topics_20230301.htm

令和4年分の確定申告から、「住宅耐震改修特別控除」又は「住宅特定改修特別税額控除」の対象となる工事をし、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に居住した方を対象に、計算明細書中の「7 その他の工事等に係る事項」で計算される控除が新設されました。改修工事をした住宅が共有である場合に、e-taxで計算すると間違った計算になっていたようです。

住宅ローン控除は、居住時期によって制度が異なるので、案外と勘違いが多いところです。あと、住宅ローン控除は、支払うべき所得税や住民税があれば受けられるものであって、支払うべき所得税や住民税がない場合は受けられないことがあります。

例えば、住宅ローン控除の適用期間中に転職して所得が減った場合等は注意が必要です。所得が減って支払うべき所得税や住民税がなかったり、あっても少額の場合は、住宅ローン控除の適用が受けられなくなります。

退職金課税「勤続年数関係なく一律に」 政府税調で意見

退職金課税「勤続年数関係なく一律に」 政府税調で意見: 日本経済新聞 (nikkei.com)

退職金に対する課税というのは、給与に対する課税よりも優遇されています。退職金は、所得税法上退職所得とされて、以下の式で計算されます。

(収入金額(税金が源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額) × 1 / 2 = 退職所得の金額

というわけで税金がかかる基礎となる金額が収入額の半分になりそうだということがわかるかと思います。さらに、収入金額の半分に対して、そのまま税金がかかるわけじゃなくて、退職所得控除額をマイナスされます。退職所得控除額は以下の式で計算されます。

勤続年数(=A)退職所得控除額
20年以下40万円 × A
(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超800万円 + 70万円 × (A – 20年)
国税庁サイトより

というわけで、勤続年数20年で退職し、退職金(収入金額)が800万円以下の場合は、退職金に対して全然税金がかからないことがわかるかと思います。(10年なら400万円以下、5年なら200万円以下。一方で、30年なら1500万円以下、25年なら1150万円以下。)

引用した記事では、20年超の取扱いについて見直しを検討しているようですが、20年以下の取扱いはどうするのでしょうか。勤続20年超の経験を他社で活かすって、日本だと中々大変な印象があるのですが・・・