Aの場合(B又はCを除く)

法律の読み方の整理です。表題のような条文があった場合、どのようなAが該当するでしょうか?

・BであるA

・CであるA

・BかつCであるA

なんとなく、BであるA及びCであるAが該当するようなイメージですが、実はBかつCであるAのみが該当します。なんで唐突にこんなことをかいたのかというと、信用組合の監査対象がわからなかったためです。会計士の監査対象となる信用組合は、

信用協同組合(政令で定める規模に達しない信用協同組合又は員外預金比率が政令で定める割合を下回る信用協同組合を除く。)

とされています。規模とは預金等総額が200億円未満、員外預金比率とは10%未満をいいます。員外預金比率とは、非常に簡単にいうと出資者以外の人の預金の割合みたいなイメージです。最初の事例にあてはめると、会計士の監査対象となるのは、

・預金等総額が200億円以上(員外預金比率が10%未満)

・員外預金比率が10%以上(預金等総額が200億円未満)

ではなく、預金等総額が200億円以上かつ員外預金比率が10%以上の信用組合が会計士の監査対象となることになります。

ちなみに信用金庫の会計士の監査対象は、員外預金比率の規定はなく、預金等総額のみとなります。

漁協等への公認会計士監査

数年前に農協等への公認会計士監査が導入されましたが、続いて漁協等への公認会計士監査も導入されます。組合員の貯金又は定期積金の受入れを行う組合は公認会計士監査が必要です(水産業協同組合法41条の2第1項、11条1項4号)。組合員の貯金又は定期積金(以下「貯金等」といいます。)の受入れを行うというのは、いわゆる銀行業ですね。それでは、銀行業を行っている漁協等はどこかというと、銀行コードがある漁協等が該当すると考えられます。

漁協等の銀行コードは以下のとおりです。

https://zengin.ajtw.net/linkcate9.php

なお、銀行業を行う漁協等がすべて対象かというと、事業年度開始時の貯金等の合計額が200億円未満の漁業協同組合又は水産加工業協同組合は対象になりません(水産業協同組合法施行令11条1項)。しかし、銀行コードがある漁協等の数を見る限り、47にも満たないことから、各都道府県に必ず1つあるような組織ではなく、複数の都道府県から貯金等を受け入れているところが大半と思われます。したがって、基本的には銀行コードがある漁協等は対象になると考えたほうがよさそうです。

監査人交代

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB095AW0Z00C22A8000000/

上場企業で最近多いようなので。いわゆる大手と呼ばれる監査法人は、日経平均株価の算定基礎になるレベルの企業の監査は受ける、そうでない場合で、監査法人側からの値上げ要求に応じない場合は監査法人の方から断る場合もあるとのことです。

大手監査法人に断られた会社は、中小監査法人への契約を打診するという流れがとまりそうもないですね。要求される作業は増加の一途で、会社側にも相応の負担が生じるため、監査法人からの要求に耐えられるところでないと上場できない流れになりそうです。

とはいえ、要求される作業が増加したからといって、必ずしも企業の不正が事前に発見できるようにならないのが悩ましいところです。

専門業務実務指針4461「仮想通貨交換業者における利用者財産の分別管理に係る合意された手続業務に関する実務指針」

仮想通貨(暗号資産)交換業者の顧客資産の分別管理ですが、公認会計士による「合意された手続」の実施があるんですね。「合意された手続」というのは、交換業者と公認会計士との合意です。証券会社の分別管理だと「法令遵守に関する保証業務」になり、保証水準が違いますね。

「合意された手続」だと、一部の手続のみですが、「法令遵守に関する保証業務」だとそうはいかず、金銭・顧客資産の管理等多岐にわたる分野に関する保証となり、一見似ていますが、かなり違います。

今回のFTX事件を受けて、暗号資産交換業者に対しても「法令遵守に関する保証業務」を求められる方向にいくんでしょうか・・・?

不正疑いの北谷町認可保育園 二度目の確認監査

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/186440?display=1

人手不足なのでしょうか?保育園など学校法人の会計監査で人件費を検証する際は、必ず当該人員が実在していることを確かめますね。ここの場合は、タイムカードの偽装など、手の込んだことをやっていたのかもしれませんが・・・

四半期開示の論点

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO65279410Z11C22A0EE9000/

上記記事より。

➀決算短信を作成するかどうか→四半期報告書がないということであれば、決算情報を知る手段がなくなるため、必要。

②決算短信の罰則→必要。粉飾ありの情報が開示されたら有益どころか有害

③決算短信に対する監査法人のレビュー→従来の四半期報告書に対するレビュー報告書のようなもの。罰則と合わせて有益な情報開示の観点からは必要だが、決算短信に対するレビュー報告書というのは違和感あり。後述のように、第2四半期について中間監査復活でいい。

④決算短信の開示内容の充実→現状で十分。

⑤第2四半期の開示書類や監査法人の保証のあり方→第2四半期のみ半期報告書を作成して、これに対して中間監査報告書をつけるか、レビュー報告書をつけるかということですかね。中間監査推奨ですね。今の四半期レビューだと、監査法人の閑散期が出てこないので、疲弊度合いが増すばかり・・・。なお、第2四半期に半期報告書があるのであれば、決算短信は第1四半期・第3四半期に比べて超簡素化してもいいと思います。財務諸表の段階損益とか流動資産・流動負債といった残高項目の合計額だけ開示するような(会社法の決算公告のイメージ)。

結論

第1四半期・第3四半期→現在の決算短信で求められるレベルの情報を開示。監査・レビューはないが、虚偽表示には罰則あり。

第2四半期→決算短信は会社公告レベルの情報を開示。半期報告書で第1四半期・第3四半期レベルの情報を開示し、監査対象とする。虚偽表示の罰則はもちろんあり。ついでにですが、決算期の決算短信も会社公告レベルの情報開示で十分だと思います。有価証券報告書を見れば必要な情報が掲載されているので・・・

IT委員会実務指針等の廃止について

https://jicpa.or.jp/specialized_field/20221017uzy.html

実務での影響は少ないかと思いますが、公認会計士試験の修了考査の受験生は大変ですね。廃止された規定のうち、IT委員会実務指針第6号「ITを利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの識別と評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続について」は財務諸表監査におけるIT監査の体系を示したもの、IT委員会研究報告第53号「IT委員会実務指針第6号「ITを利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの識別と評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続について」に関するQ&A」は実務指針6号をQ&A方式にしたものでした。

この6号と53号が廃止され、IT委員会の研究報告としては、

IT委員会研究報告第 57 号「ITの利用の理解並びにITの利用から生じるリスクの識別及び対応に関する監査人の手続に係るQ&A」だけになりました。

体系的理解の方は、監査基準委員会報告書 315「重要な虚偽表示リスクの識別と評価」でやることになったようです。

修了考査は12月にありますが、このタイミングで廃止とは受験生は勉強がやりづらいですね。