システム監査の場合

昨日、監査の種類について投稿しましたが、システム監査の場合だと、保証型監査と助言型監査という分類になります。
保証型監査というのは、 専門性と客観性を備えた監査人が、一定の基準に基づいてITシステムの利活用に係る検証・評価を行い、監査結果の利用者にこれらの
ガバナンス、マネジメント、コントロールの適切性等に対する保証を与える監査をいいます。
一方で、助言型監査というのは、改善のための助言を行う監査をいいます。
この違いは、システム監査を実施する際の指針となる、システム監査基準に明記されています。

https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/sys-kansa/sys-kansa-2023r.pdf
(こちらの7頁)

しかし、公認会計士が監査を実施する際の指針となる監査基準は、財務諸表監査が前提となっており、
指摘型監査や助言型監査についての言及は全くありません。

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/kijun/20201106_kansa.pdf
(こちらの1頁)

監査の種類

公認会計士の独占業務である監査とは異なる監査では、保証型監査と指摘型監査に分かれていると言われることがあります。
保証型監査というのは、公認会計士の独占業務で、決算書が正しいこと等について保証する監査です。
一方で、指摘型監査というのは、特定の事項に対して、決算数値だけでなくそれ以外の事務手続を調査するなど、
様々な観点から、指摘事項や意見を挙げていく監査をいいます。公認会計士の場合だと、地方公共団体に対する外部監査ですね。

公認会計士の独占業務である監査とは?

公認会計士法では、公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とするという規定があります(公認会計士法2条1項)。
これが、公認会計士の独占業務である「監査業務」と言われています。
ただ、公認会計士法で、「監査」とはどういう業務を意味するのか、定義がありません。そのため、最近書いたように、政治資金監査のような、
「監査」とつく業務でも公認会計士の独占じゃない場合があります。

日本公認会計士協会のウェブサイトでは、上場企業の決算書が適正なことを保証するといった、一般的な「監査」の説明がありますが、他の士業でも実施可能な「監査」との違いについて、明確に説明した箇所がないようです。

政党助成法監査

こちらは、政党助成法に基づく監査です。国が政党に対し政党交付金による助成を行うこととし、このために必要な政党の要件、政党の届出その他政党交付金の交付に関する手続を定めるのが政党助成法で、公認会計士又は監査法人による監査が必要で、弁護士や税理士はできない業務です(政党助成法19条2項)。

https://jicpa.or.jp/specialized_field/files/2-13-19-2-20211207.pdf
こちらが監査報告書の記載例です。
政治資金監査とよく似ていますが、語尾が「・・・ものと認める。」となっていますね。
政治資金監査の方は事実の列挙という感じですが、政党助成法監査の方は、事実を証明しているということになります。
文言にすると微妙な違いなのですが、この結論に至るまでの手続の質及び量は相当違います。

政治資金監査

https://www.soumu.go.jp/main_content/000842559.pdf

こちらは、登録政治資金監査人の登録申請書ですが、公認会計士の独占業務ではなく、
弁護士、税理士も登録政治資金監査人になることが可能です。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000768213.pdf

こちらは、監査意見書の記載例です。
財務諸表監査の監査報告書と異なり、「適正に表示しているものと認める。」とか「法令(及び定款)に適合しているものと認める。」といった記述がないですね。

「今の政治資金監査はザル」会計のプロが断言 総務省のマニュアルに「数字が妥当か評価しなくていい」

https://www.tokyo-np.co.jp/article/320035

「監査」という名称ですが、公認会計士が行う「監査」とは別物の作業のようです。
公認会計士が行う監査は、監査対象となる決算書等が目的に沿って適正に作成されたことを保証するものです。

なお、政治資金監査を行うには、研修を受けて登録政治資金監査人になる必要があるのですが、登録者の大半が税理士のようです。
税理士会からは政治資金監査の改善要望が出ています。

登録政治資金監査人による政治資金監査のあり方に関する要望について

期中レビューの義務付け要件該当会社

四半期レビューは、2024年4月1日以降は、第2四半期のみが必須で、第1四半期と第3四半期は任意になりました。
しかし、東京証券取引所に上場する会社は、一定の場合に、第1四半期と第3四半期についても必須になります(有価証券上場規程404条3項、有価証券上場規程施行規則405条2項)。
なお、該当する会社は、以下で公表されています。
https://www.jpx.co.jp/listing/others/review/index.html